千の天使がバスケットボールする

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2013.12.15 Sunday

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2007.09.19 Wednesday

マイケル・ムーア監督『華氏911』

華氏最近、ドミュメンタリー映画が人気があるそうだ。
”泣ける”とか、”せつない”という小説のタイトルについた修飾文よりも、現実の世界はよりドラマチックで尚深いのだろう。
先日鑑賞した最もホットなドキュメンタリー映画の『シッコ』があまりにも素晴らしい作品だったので、マイケル・ムーア監督の『華氏911』もお試し。
この童顔で太ったムーア監督のたくらみがプロパガンダにあることが明々白々なのだが、かの個人主義のフランス人だけでなく、当事者母国の人々や我々すら、その意図にあっけなくノレルというのは、いったいなんなんだろう、と考えた。本来だったら、このように政治的意図まるわかり映画には、その手にはのるかとかまえたり、むしろ反発を覚えたりするものではないだろうか。少なくとも、私はそうだ。
しかし、この映画は観客動員数の金字塔をたてるくらいに世界中にヒットした。私も観た、感じた、考えさせられた。つまり、監督の意図にはまったのだった。

本作品の興行の大成功の理由は次のとおりになると考える。

.泪ぅ吋襦Ε燹璽監督の人柄・・・あの巨体と野球帽がにくめない。映画製作の動機が、芸術性の開花でもなければ、お金もうけでもなく、一貫して彼の良心が源にある。だから、意図がわかっていても素直に耳を傾けられる。

映画監督としての表現者の才能・・・「ノラネコの呑んで観るシネマ」のノラネコさまも評するように、彼が編集の天才で、膨大な素材をコラージュしする発想とその見事な組み合わせ方、一本の作品に仕立て上げるセンスとテクニックの才能のなせる技が、作品の完成度を高めている。

ユーモラスと毒・・・アイスクリーム屋のワゴン車を借りて実際は自由を抑圧する米国人流のジョークかと思える「愛国法」の条文をスピーカーで読み上げたり、毒を含んだ笑える脚本と演出がさえている。しかし、政治的で悲惨な戦禍を示す一方で、すでに報道されていて世界中の人が知っている米国兵士の死体が宙吊りになっている映像やこどもたちが銃撃にあって流血している姿や、イラク兵をおもちゃにする死者の尊厳まで損なう行為や虐待の映像まで流す必要は本当にあったのか、という疑問も残る。これは、あくまでも私の思い入れである。無駄な悲劇をわかりやすくダイジェクトに米国人に届けることの意義はあるのだが、映像化されなくても、私たちは報道で知っているし、戦場の悲惨な状況は想像もできる。

ず埜紊鷲疂彭な家族愛・・・後半で登場するイラク戦争で息子を亡くした母の涙と訴えは、まるでやらせ番組かのようにはまっている。それに戦争で家族を失う哀しみは、国境も世代も越えて誰にでも共感できる。但し、母親自らが息子に入隊を勧めていたという事情が、ブッシュ批判と一部の特権階級の富みと繁栄のために貧困層の若者の命が使い捨てられているという社会構図に一致していることをわかりやすく示している。そうは言っても、本音は与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」の歌にすっかりなじんでいる日本人には、現代において息子を戦場に送る母親の心情を理解するのは不可能でしょう。

アメリカよ、美しく老いよ」の著者である猿谷要さんが、米国が昔から大義名分のある戦争を肯定する風潮があると指摘していることからも、この映画を所謂反戦映画とみるのは誤りだと思う。ムーア監督は、愛国心にたけている人物である。今回の戦争批判は、ブッシュ大統領の選挙の疑惑の勝利から出発している強烈なブッシュ批判のひとつの延長戦とも考えられる。だから彼にとって大義が正しければ、逆に戦意高揚のプロバガンダ映画を作っていたかもしれない。そういう意味では、観客動員数と諸外国の賞賛をあわせると、プロバガンダ映画としては最高の成功をおさめていると言ってもよい。マイケル・ムーア監督は、並のおでぶちゃんの監督ではない。横綱級の才覚をもっている。あっぱれ。
それに本作品に最高栄誉のパルムドール賞を与えたカンヌも、自国の政治的な立場が推奨した銘柄に一致した、という読みもしている。
映画の内容、ブッシュ一族とサウジアラビアの王家、さらにビンラディン一族とのつながりなど、すでに殆ど報道されている事実である。しかしそれはともかく、障害はあったかもしれないが、それを堂々と公に映画化できたことの重要さは、かってマッカーシズム旋風に荒らされたハりウッドの歴史を知っているムーア監督自身は、充分に承知していることだろう。

ブッシュ大統領の不可解で不透明な大統領選挙の顛末に関しては、オムニバス形式の映画『10ミニッツ・オールダー』のスパイク・リー監督「「ゴアVS.ブッシュ」を観ると良く理解できる。わずか10分のオーソドックスな手法でつくられた地味な映画だが、これも非常に優れたドミュメンタリー作品である。

イラク戦争がはじまった時、他の記者が具体的な要請人員や戦闘期間を質問するなか、女性ジャーナリストのヘレン・トーマスさんはブッシュ大統領にこのような質問をした。

「いろいろな質問の説明は承りました。
だけど、なぜ罪もないイラクの子供が殺されなければいけないのですか。」

マイケル・ムーアに敬意を払いつつも、私はこの素朴なたったひとつの疑問を、本映画に捧げたい。

 

2013.12.15 Sunday

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『華氏911』旬は過ぎてもムーア×ブッシュは抜群の食い合わせ
映画の評価(5点満点) ★★★☆☆ プアーです。ドキュメンタリー映画のよいところは「その国の文化が垣間見れること」+「頭が良くなった気がすること」の2つである。普段肉体労働をなんてやってると、たまには賢くなるものでも見ないとという殊勝な義務感が頭をもたげ
(映画をもっと楽しく![シネマポスト] 2010/03/09 11:37 PM)

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