千の天使がバスケットボールする

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2013.12.15 Sunday

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2008.04.27 Sunday

「波乱の時代」下 アラン・グリーンスパン著

あらんアラン・グリーンスパン氏に再会する。「波乱の時代」の下巻を読了。
ウィンスト・チャーチルの「後ろを振り返るほど、未来がよく見える」という名言にならい、下巻は、80歳を過ぎたエコノミストが見る開かれた未来の窓からうかがえる風景が内容の中心となっている。経済政策立案者にとっては、民主社会と市場主義経済の機能に歴史的な連続性を見ることは、物理法則ほどの確かさはないが、コインを投げた偶発性の確率よりも確かだと。ここで、あらためてグリーンスパン氏が最も思想的に影響を受けて尊敬する人物が、個人の自発性と市場の力の啓蒙主義を広めたアダム・スミスだったということを思い出した。市場はあまりにも複雑になりすぎ、行政の規制能力が落ち、人間が効率的に介入できないため、リスク・ヘッジは市場の柔軟性を維持すること、ひいてはヘッジ・ファンドやプライベート・エクイティ・ファンド、投資銀行などが金融市場で自由に泳ぐことによって不均衡を解消していくという意見に至る。「神の見えざる手」が、結局カネ稼ぎの富が更なる富を生む構図に合理的で有効になるとは、道徳家でもあったアダム・スミスの予想外のことだったかもしれない。

そして米国のみならず、ロシア、中国、南米と世界規模で見通すグリーンスパン氏は、市場主義、資本主義経済が、もっとも効率よく生産的であることが、グローバル化によってあきらかになるとされるが、その一方、果実の配分が公平に分配されないことが最大の弱点だとしている。(私自身は、最近、この弱点に米国型市場主義経済の曲がり角を感じて、いつの日か、遠い未来には別の形態の経済体制が生まれると予感しているのだが。)

在任中は、曖昧模糊とした言い回しで有名だったグリーンスパン氏だが、全体を通して静かだが明晰な高い山にある湖を見るような印象を受ける。熱狂もなければ、絶望もなく、おだやかで澄んだ湖面から、読者は心よくその底をのぞいて眺めているような心境になる。歴史が、熱狂と絶望の繰り返しであり、何度繰り返しても学習しないのは、それが人間の本性であることを達観しているからだろうか。格別新鮮な発想や斬新な見方はないが、読んでいるうちに、そう、象牙の塔の住人ではなく、FRB議長を退任するまで、日々是市場の”生きた”経済の中心にいた老エコノミストの最後のスペシャル講義を拝聴しているような気がしてくる。

2030年後の日本におけるグリーンスパン氏の関心は低く、そっけないのが少々淋しい心境もする。
2000年にグリーン・スパン氏が当時の宮沢喜一大蔵大臣に会った時、米国のRTC方式を勧めたが、”体面を失うこと”を恥じとする日本文化の前に断られたという記述があった。日本の資本主義経済は、別の文化でまわっていることに気がつく。確かに日本人は小さな島国の民族意識からだろうか、利己主義的にふるまうようよりも、”国益”の中でものを考えることを尊しとする人種である。しかし、新卒の就職事情がバブル期以上の活気があるとは言いつつも、日本経済は停滞して、我々は希望をもてなくなっている。余談だが、将来、年金給付水準を下げても、日本人は制度の変更を国益の中で考えるから心配ないと豪語する?日本の高級官僚たち。米国だったら議会や有権者が納得しないだろう。所詮、見方を変えれば国民を国益の単なる駒としか見ていないテクノクラートに、私たちは行政をゆだねているのかと思うとグリーンスパン氏だけでなく私も失望した。

人間が逆境に耐え、進歩を続けられるのはその適応力にある。その適用力こそが、我々を楽観的にしてきた。今後、予想もしない将来が待っているかもしれない。しかし、我々がみな本能的に追い求める希望のフロンティア精神が消滅することはないだろう、というグリーンスパン氏の最後の確信に導かれて、グローバル化の荒波に乗った私たち日本人の船のいくつく先を見たいと考える、そう、できればはるか遠くまで。

グリーンスパン氏が2歳の時に両親は離婚した。以降、ずっと母と母方の祖父母とともに暮らしていたが、ウォール街で活躍した父による大恐慌の終焉を予想した経済書「RECOVERY AHEAD!」には、父からひとり息子のアラン宛ての不思議な献辞が記されていた。
「息子のアランへ。(中略)この論理的な予想の背景にある根拠を解釈し、あまえ自身の仕事をはじめるよう期待している」
まるで、この曖昧模糊とした不思議な父からのメッセージに導かれるように歩んだ著者の人生の歴史が上巻だとしたら、下巻はその80年にわたる人生の集大成かと思われる。だから、幾分感傷的な感想にもなってしまうのだが、金利、市場主義経済がよくわかる経済の入門書、さらにその道のプロでもある市場関係者にもお薦めできると思われる著作である。お忙しい方には、読物として魅せられる上巻もよいが、感動すら覚える下巻だけでも。
ついでながら、あとがきで有能なジャーナリストである妻に最大級の謝辞を贈りながら、最後に、20万語に近い分量があるので、すべてを確率で考えるわたしは、どこかに間違いがあるはずだと思い、読者にあらかじめお詫びをしている。私も諸々すぐに確率で考えるタイプなので、こんなチャーミングでユーモアな言い方にちょっと嬉しくなり微笑んでしまった。^^

*RTC方式⇒
〃弍調躓,亡戮辰臣蓄金融機関の大部分を破綻させる
∋饂困鮴┿患還に移す
資産を大幅に割引して処分。不動産市場の再活性化。



「波乱の時代」上巻
JUGEMテーマ:読書



2013.12.15 Sunday

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01:35 | - | - | -

コメント

哲学があると、世界がなかなか継続的分析できて楽しいですよね。ちなみに、できれば、勝ち組になって、豊かな物質的生活を送りながら、「それ」だけなんて、なんてつまえらない!と公言するのが、粋だと僕は思っています(笑)。でもまー最近は、異動して・・・・いや、前の職場は1年だけのレンタルで、アサインされたプロジェクトが終了したので、、、、満を持して、自分が入社以来希望していた部署へ配属されました。。。。いやー凄い感無量です。その分、また下積みから出大変ですが(苦笑)。でも、やっぱりやりたいことが出来ているのは、本当にうれしいですよね。
2008/04/30 12:06 AM by ペトロニウス
>ペトロニウスさまへ

やっぱり良い仕事に恵まれ、良い仕事をした方が、人生充実して世界は広がりますよね。
それをひとは「勝ち組」という言い方をするかもしれませんが。
働き甲斐というモチベーションって大事だな。。。(←独り言です。)
ただし、良い仕事⇒懐が豊かになる、というものでもないこともありますがね。

>入社以来希望していた部署へ配属されました

それは、すっご〜〜〜っくよかったですね!
これまでの頑張りと実力が認められたから、希望が叶ったのでしょう。
また新しい局面でのブログの更新が楽しみです。
・・・でも、余計なことですが、たまにはお休みをされた方が、、、だって健康も大事ですよ。
2008/04/30 11:23 PM by 樹衣子

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