千の天使がバスケットボールする

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2013.12.15 Sunday

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2008.04.20 Sunday

「続 獄窓記」山本譲司著

つgく2法務省発行の「矯正統計年報」によると、現在、年間3万人の受刑者が入所してくるが、そのうち25%の受刑者が、IQ70以下の知的障害者である。そんな彼らが、刑期を終えて出所後待っている環境、社会の受け皿は。

刑期満了後、3ヶ月たったあるクリスマスの日、著者は大量に投与されてせいだろうか、太ったある32歳の男性とずっと手をつないで動物園にでかけた。彼は、著者の刑務所時代の友人である。出所した彼を待っている家庭は、母親は12年前に蒸発して行方不明、父親は脳梗塞の後遺症で半身不随、そして弟は統合失調症を発症。こんな家庭環境の元囚人の知的障害者の彼に、社会復帰のプログラムは用意されていない。そもそも、受刑されていた刑務所時代も、厚生教育のプログラムを受けるわけでもなく、懲罰を受け、処遇困難者として薬漬けにされ、同じ受刑者からもネグレストされて「非人間的」「非社会的」に落ちていく彼ら。
”秘書給与詐欺事件”で1年6ヶ月服役した著者が、こんな塀の中の驚くべき実体をあきらかしたのが体験記の「獄窓記」だった。その本の最後は、本当の現実を知り、これまでの理想を語り、福祉政策を論じてきた政治家としての活動を恥じ、出所後は「福祉の仕事に関わりたい」と結ばれていた。そして刑期を満了して出所した。
その後の元囚人の山本氏の人生・・・ここから始まるのが「続 獄窓記」である。

「刑務所は、やっぱり大変だった。でも、これからのほうが大変だ」
いわば人生の選択肢を与えてくれた友人のその言葉は、著者に重くのしかかる。
著者は、友人とは違って、あたたかく迎えてくれる妻、可愛い盛りの息子という家族があり、また同居をすすめてくれた義父母の自宅や友人、恵まれた環境といってもよいだろう。それにも関わらず、本書の前半は、囚人としてのコンプレックスにさいなまれてひきこもる日々がくりかえされて書かれている。元々志高く、真面目な人だけに、常に自分を責めたてる。確かに福祉の専門学校の入学も断られ、”前科”の重いくびきが、社会復帰をそがいでいた。社会から抹殺されたかのような厳しい現実に、著者は絶望しそうになる。しかし、受刑体験のすべてを書き残そうと決意して生まれたのが、「獄窓記」だった。このたった1冊の本から、著者の人生は、文字通り第二の人生の道が開かれる。
私が最も感銘を受けたのは、著者とまさに”福祉”を本気で考えている人々との出会いと、そこから動きはじめた数々の活動である。
運命的な出会いのような前作を出版したポプラ社の編集者、出版後、最初に取材にきた長靴をはき大きな蝙蝠傘を背負った北海道新聞の記者、そして「社会復帰センター」建設に関わる建設会社の人々。誰もが受刑者の処遇を変えて、刑務所を改革をして、社会から孤立している障害者を救いたいと願っている人々だった。

やがて山本氏の活動は法務省にも認められ、全国の刑務所長たちに講演をするまでになり、実際刑務所は確実に変革しつつある。また著者は、現在、知的障害、精神障害のある受刑者に対し、生活訓練・社会適応訓練、カウンセリングなどの障害特性にあった処遇を行う新しい刑務所の運営アドバイザーとなっている。最初の新刑務所の建築の開札に、品質では勝っていたのに価格差で落札できなかった時、
「また挑戦しましょう」
そう叫ぶように電話で伝えて終えた最終章の「いつの日か」は、まだまだ続いている。

著者の人生の変遷に驚くが、エリートの政治家時代よりも、たとえ前科があっても、彼ははるかによい仕事をしていると思われる。出所後の仕事を知れば、誰もが選挙になると”福祉”を声高に連呼する政治家よりも彼の活動を応援したいだろう。
けれども忘れてはいけないのが、著者がようやく就職できたのが、知的障害者入所施設の時給1000円の支援スタッフの仕事だった。この仕事は、獄中での体験とともに、今日の活動を支える原点である。人との出会いに恵まれている著者は、こえからも家族や友人、多くの人々の理解や支援が、活動や運動を応援して支援してくれるだろう。しかし、本当に彼の活動をかげながら最も支えているのは、受刑者時代の多くの認知症になった老人や障害のある受刑者の友人たちの存在だ、と私は思っている。


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・「累犯障害者」塀の中の不条理
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