千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  
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2008.04.16 Wednesday

「波乱の時代」上 アラン・グリーンスパン著

あらん米国経済、ひいては世界経済の金融をつかさどる偉大なる船長が、87年レーガン大統領によって任命され、一昨年80歳を前に引退するまでFRB議長として”波乱の波”をのりこえ、根拠なき熱狂をかわし、いくどもそのソフト・ランディングを神業とまであがめられたアラン・グリーンスパン氏の回想録のタイトルが、「波乱の時代」。これは、皮肉にも後継者であるバーナンキ議長への次なる時代の予感をこめられたメッセージとも受け止められる。しかし、悪夢のようなサブプライム問題へのグリーンスパン氏の原罪の有無と責任を問う前に、私は本書に魅せられた。
概ね経済・産業界、政界で活躍した地位も名誉もある人物の回想録は、饒舌で自信に満ちた自己アピールで退屈な時もあるのだが、率直で飾らない文章と、なんといってもジュリアード音楽院で音楽を学んでジャズ・プレイヤーとして活躍した青年が、計量経済学の黎明期にマクロ経済学モデルとその限界を理解した後に、エコノミストとして活躍した半世紀。それは米国経済の軌跡であり、地球儀の上にかかる雲の流れを眺めているような感覚を読者に与える。そして世界の頂点を極めたエコノミストの哲学のような思想や発想、その優れた洞察力と品格のある性質、今でも記憶に残る日経新聞に掲載されたアンドレアさんとの結婚式の写真(そもそも日経新聞に個人の結婚式の写真が掲載されたこと事態が珍しい)からも想像されるように、恋人時代からのおだやかで信頼の充ちたふたりの関係も含めて、私は丹念に文字を追うことの楽しみを慈しむような感じだった。

予想どおり、グリーンスパン氏は共和党員である。クラシック音楽好きだからと言う訳ではないが、保守的な方でもある。そして氏は、ルートビヒ・ウィトゲンシュタインにはじまる哲学であり、知識は事実と数値からのみ得られるとする論証を重視する論理実証主義者である。原子物理学にも魅力を感じていて、マンハッタン・プロジェクトの科学者に共鳴していて、価値観や倫理、行動様式は文化を反映して、厳密な論理の対象にならないと考えている。この主義思考から、社会科学者としてのエコノミストとしての一面もうかがえて興味深かった。
また、ニクソン大統領から現ブッシュ大統領まで、さりげない表現ではあるが、歴代の大統領の貴重な証言にも、グリーンスパン氏が経済分析だけでなく人物を分析する能力にもたけた人という印象も残った。氏によると権力の頂点にたつ者がかなり変わっているのを見てきたが、フォード大統領は、精神的に常に安定していて冷静。自分が知っていることが何で、知らないことが何なのかを理解し、経済に明るいほどではないが、経済政策に関する見方が洗練されていて筋が通っていた。カーター大統領は優柔不断で、無策ではないが経済動向に関しては不運な人。レーガン大統領は、大統領の地位に明るさと善意をもちこみ、知性のカタチが違っていて、グリーンスパン氏はすかりその性格に魅了された。クリントン大統領はきわだって頭脳がよく、読書好き、世界のあらゆることに好奇心をもち、経済の細部まで関心をもった。更に現実をごまかそうとせずに、勇気のある人だった。そして、歴代大統領の中で強烈な人物は、やはりニクソン大統領だろう。クリントンと並ぶくらい飛びぬけて優秀で、自分意見を述べる時は、そのままでセンテンスとパラグラフが見事に整った文章になる話し方をし、たった今入手した知識のなかった最新ニュースさえも、大学教授のように豊富な知識をもっているかのように記者会見にいどむことができる。まさに、政治家向けの才能がある、のだが、或る日政策について議論する場で、民主党がいかに悪辣かを口汚く非難しはじめた。これはある程度想像できるが、驚いたのが、口調が厳しく卑猥な言葉が次々と飛びだしたという点だ。非常に優秀な反面、人間嫌いでとんでもなく偏執的、というキャラクターの持主は危険すら感じる。フォード大統領とは、昼と夜ほどの違いのある人間の暗い側面をかいまみたグリーンスパン氏は、ニクソン大統領から離れていった。

随所にグリーンスパン氏の鋭く光るセンスや信条、社会主義や計画経済がうまくまわらない理由、インフレをコントロールする技などがさらりと詰め込まれた本書は、一度は読んでおきたい経済の教養本である。
そして今、老いたエコノミストが夢みるのが、党派をこえた友情の培われた共和党の大統領に民主党の副大統領、あるいはその逆パターン。それもありかな、と無知な私ですらそう思う。そう、確かに世界が平和であれば問題はないはず。。。



「波乱の時代」下巻
■アーカイブ

米国の不思議な聖域「FRB」

「ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝」田中秀臣著
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