千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  
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2013.12.15 Sunday

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2008.03.02 Sunday

『君のためなら千回でも』

君2人間には、出自に関わらずもって生まれた器がある。大きな器、小さな器。人としての器量と度量をこえて、その器に水を無理にそそごうとしても破綻する。
そんな親子の葛藤、友情、人としての罪と贖罪、宗教、祖国、、、多くの普遍性をもったアグガニスタンからの移民による新人作家のデビュー作の原作「The Kite Runner」は、全米でベストセラーになり、世界中で500万部売れているという。

2000年、サンフランシスコに住むアミールのもとに出版社から小説が届く。それは、こどもの頃からの夢を叶えた彼の作品だった。はやる胸をおさえ、幸福感に包まれて妻とともに本をなでる彼に、1本の電話が届く。
「今こそ、故郷に帰る時だ」
亡くなった父の親友であり、恩人でもあるラヒム・カーンからの電話だった。やりなおす道はある、という最後の言葉に、アミールの心は1970年代の中央アジアの真珠と言われていたアフガニスタンの故郷カブールでの思い出が胸によみがえる。

裕福な家庭に育ったアミールは、母を出産で失い厳格な父に育てられる。共産主義が大嫌いな父ババは、街の有力者であるが、私財を投じて孤児院を設立する理想主義者でもある。父の信念はゆるぎなく、その言動と行動力には人間としての器の大きさを感じさせられる。そんな父に、なにごとにつけ優れている1歳年下の召使の息子ハッサンと比較されて、自分は愛されていないのではないかと悩むアミール。
けれどもアミールとハッサンは、主従関係をこえて友情を深めていく。ハッサンは凧の行方を予測し、文盲だが賢く生活経験からくる真理をみぬく力を備え、アミールとの友情のためなら犠牲を厭わない忠誠心をもつ父も認める器の大きな少年だった。彼らの友情の絆は、カブールの冬の街で行われる伝統的な凧揚げの大会で父の記録を塗り替える見事な優勝という最高の栄誉でよりいっそう強まるかと思われるのだったが、決定的な事件をきっかけに、この日をさかいに彼らの道はわかれていく。おりしもソ連からのアフガニスタン侵攻のため、アミールと父は米国に亡命せざるをえなくなった。一生の罪を抱えて、アミールは命からがらで異国に逃れていくのだったが。。。

こどもたちの演技も素晴らしいのだが、私はなんと言っても父のババの存在感に胸をうたれた。フィクションの世界の人物とはいえ、亡命中に命がけで人間としての尊厳を守ろうとする強靭な意志と姿、ビシネスマンとして成功し富豪だったのだが戦禍のために全財産を失って異国のガソリンスタンドで働き、客が運転している真紅の芸術品のような車を「Beautiful Car」と感想を述べるやつれた表情、しかし彼は末期癌におかされても最後まで誇りを失わなかった。79年にソ連に侵攻されて米国に逃れた彼らの無念さと苦渋を感じさせられる。そして、こどもとは思えない成熟したハッサン。その謎が、最後にあかされるのも、物語つくりの魅力となっている。
故郷を逃れた彼らの次の世代になると、医師となった原作者と同じように大学を卒業して社会的に成功している者もでてくる。しかし、彼らは逃れたのか、結果的に祖国を捨てたことになったのか。
現在のアフガニスタンでは、こどもたちがソ連の置き土産の地雷で足を失い、タリバンによるイスラム原理主義による独裁政治の圧制のため民衆が虐殺された経験をもつ。この映画の上映は、アフガニスタンでは禁止されたのだが、それもやむをえないと感じる同国の緊張した情勢である。それを納得させるようなアミールが、20年ぶりにカミールに戻った時の映像は、あまりにも過酷で残酷だ。荒れた地で再会したかっての憎む相手の告発は、平穏な生活を営むための多くの苦難を乗り越えてきたとしても、移民たちの誰もが祖国への罪悪感から逃れられないだろう。この映画は、タイトルからわかるように、罪への贖罪というテーマももつが、そういう意味では彼らにとって本当の贖罪の永い旅は終わっていないのではないだろうか。大空を舞う凧のシーンが映画でも重要だが、あの凧は祖国を捨ててきた移民たちの姿に重なる。凧の糸を握りしめ、希望に満ちていた少年たちの大地は、すっかり荒れ果てて昔の名残がなくなってしまった。

惜しくもアカデミー賞は逃したが、名誉を重んじるアフガニスタンの文明や宗教観の違いなど多くのことを考えさせられる映画だった。これは、お薦めしたい。

****************************************

アフガニスタン政府は16日、同国を舞台にした映画『君のためなら千回でも(The Kite Runner)』の上映を禁止すると発表した。少年が性的暴行を受けるなどの暴力シーンが民族間の緊張を刺激する可能性があるためという。
文化・青年省のNajib Malalai氏はAFPの取材に対し、当該シーンは「民族的な背景」を持つため、国内上映を許可できないと語った。民族間の対立による内戦や、90年代のタリバン(Taliban)による支配などを経験した同国では、民族問題は大きな火種だ。
『君のためなら千回でも』では、少数民族ハザラ人(Hazara)の少年が、多数派パシュトゥン人(Pashtun)の少年に性的暴行を受けるシーンがある。
そうした事実を踏まえてMalalai氏は、「社会の秩序を脅かすものと考え、上映禁止とした。ある民族の人間が別の民族の人間に危害を加えると、原因はその民族にあると勘違いされる。そういう事態は容認できない。アフガニスタン人が登場する映画でも、それがわれわれの宗教や文化とまったく矛盾するものでなければ、上映は通常許可される。しかし、この作品には民族的背景を持った性的暴力シーンが含まれている」と語った。
国営アフガンフィルム(Afghan Film)の責任者も、「アフガニスタンの国民は、こういったシーンを受け入れられないだろう」として上映禁止に同意している。 

同作品は、米国在住のアフガニスタン人作家カーレド・ホッセイニ(Khaled Hosseini)による2003年のベストセラー(邦題:『カイト・ランナー』)を映画化したもの。1973年の国王追放から、ソ連の軍事介入、旧支配勢力タリバンの登場まで、アフガニスタンの激動の時代を舞台にしている。ハザラ人は、パシュトゥン人率いるタリバンによる虐殺も受けた。
作品に出演した4人の少年は、問題のシーンを理由に暴力行為を受ける恐れがあるとして、前年12月に母国を離れ、米国に移住することを余儀なくされている。
宗教や文化にまつわる微妙な問題は、これまでにも国内で様々な抗議行動を引き起こし、暴動に発展することもあった。

2006年には、イスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の風刺画が問題となり、数日間にわたる抗議行動が行われている。2007年には、米軍が配布したサッカーボールにコーランの一節を含むサウジアラビアの国旗が描かれ、抗議の対象となった。また、ハザラ人への侮辱だとしてインド制作の『カブール・エクスプレス(Kabul Express)』が上映禁止となったが、裏ルートでDVDが入手できたため、やはりデモに発展した。さらに12月には、識字率が低いアフガニスタン人の中で影響力を持つ宗教指導者らが、ある音楽番組を「不道徳」「反イスラム的」として、ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)大統領に放映中止を求めている。08/1/18

監督: マーク・フォースター
脚本: デイヴィッド・ベニオフ
原作: カーレド・ホッセイニ
JUGEMテーマ:映画



2013.12.15 Sunday

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12:51 | - | - | -

コメント

樹衣子さん、これ原作もおすすめです!!
映画ではカバーしきれなかったところも丁寧に描かれていて、また更に考えさせられます。
これを観るまで、ハザラという言葉さえも耳にしたことがありませんでした。 人種差別って、結局その人種と普段全く関わりのないものにとっては、なぜ差別されなくてはならにのか、どうしてそんなに憎悪の目を向けるのかさえわからないようなものなんですよね・・・。
お父さんの友、ラヒム・カーンも大きな存在ですよね。
アミールは彼がいなかったら、大人になったときにまるっきり違っていたのではないかな。
子供にとって、残念ながら必ずしも親が一番の理解者とは限らず、こうしたほかの大人との交流が大きな助けとなることって結構あると思うのですが、今の世の中なかなか「他の大人」がここまで子供の人生に大きくかかわることも、難しくなっているのかもしれないな、とも思いました。
2008/03/03 11:34 AM by 有閑マダム
>有閑マダムさまへ

やっぱり原作もおすすめですか。
映画を観ていて、ずっと気になっていたのが、
ハザラ人への差別と米国に移民をした人々の感情です。

>ハザラという言葉さえも耳にしたことがありませんでした

私もそうですよ!知らないことが、自分のアフガニスタンへの無関心だと思いました。
それに義父を将軍と呼ぶことを含めて、父親世代の無念さや複雑な感情が
映画では表現してきれていないものたりなさを感じました。
原作は、もっと奥が深いはずという気がしていましたので、ご紹介くださってありがとうです。

>ラヒム・カーンも大きな存在ですよね

男女の差別のある国、名誉を重んじる民族だと感じましたが、
男として大きな人物でしたよね。
アミールを理解し励まし、最後は自分の問題と厳しく言う彼の存在は、
物語で重要な役回りをしています。

>今の世の中なかなか「他の大人」がここまで子供の人生に大きくかかわることも、難しくなっているのかもしれないな、とも思いました。

寂しいことに、学校の教師もそうですね。
2008/03/03 11:43 PM by 樹衣子
樹衣子さん、映画「砂と霧の家」はご覧になりましたか? 革命でアメリカに移住した、誇り高いイラクの高官をベン・キングスレーが演じています。 
この映画を観たときにも、祖国の激変期にやむを得ずアメリカに住居の拠点を変えなくてはならず、そこでは今まで自分が持っていた社会的地位や敬意を丸っきりなくしてしまい、それでも誇りを保ち続けようとするイラン人のことについて、考えさせられました。
ジェニファー・コネリーが主演なだけあって、非常に後味の悪い、暗い話ではあるのですが・・・印象深い映画です。
2008/03/04 10:09 PM by 有閑マダム
>有閑マダムさまへ

映画「砂と霧の家」って、そういう本だったのですかっ。◎◎
私はてっきりホラー映画だと思っていましたよ。観ていませーーん。

>非常に後味の悪い

観る価値ありますかね。

>それでも誇りを保ち続けようとするイラン人

そういえば、ご近所の雑貨やさんの噂を思い出しました。
地元出身の方によると戦争で財産を失った元資産家なのだそうですが、
私はめったに行かないのですが、こども相手の小さな商売なのに
なんとなく品格があって不思議な印象がありました。
社会的地位も財産も失っても誇りをもつこと、
そして最初から地位もなければ財産もなくても、
人としての誇りをもつこと、、、なんとなく考えさせられますね。
2008/03/05 11:04 PM by 樹衣子
これは、、、みたいですね・・・。
2008/03/09 6:18 PM by ペトロニウス
>ペトロニウスさまへ

この映画は大変よくできています。
けれども、今ひとつものたりなさを感じるので、もしかしたら映画だけでなく
有閑マダムさまお薦めの原作を読めべきかもしれません。
映画を観ながら考えたのですが、米国映画らしく単純に「タリバン=悪」なのですね。
でも、ご承知のとおりそのタリバンを育てたのも米国です。
米国の恩恵を受けて今日の地位を築いた主人公(原作者)の立場で考えると、より複雑だと思うのですが。
2008/03/10 9:36 PM by 樹衣子
TBありがとう。
そう、「中央アジアの真珠」とも呼ばれていたんですね。豊かで、豊穣な土地でもありました。
それが、世界でもっとも苛酷に荒れ果てた土地になっています。
中村医師などの活動も含め、緑が戻る日を信じたいと思います。
2009/05/14 1:38 AM by kimion20002000
>kimon20002000さまへ

コメントありがとうございます。
中央アジアの歴史は私よりもずっとkimonさまの方が詳しいかと思いますが、
荒廃した町の映像は胸が痛みますよね。
故郷を捨てられた人は、むしろ幸運だったと感じられるくらいですから。
2009/05/14 10:24 PM by 樹衣子

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