千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  
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2013.12.15 Sunday

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2008.03.01 Saturday

『ラスト、コーション』

トニー中国・上海の在上海日本総領事館に勤務していた40歳代の男性館員が昨年5月、中国側から外交機密に関連する情報などの提供を強要されていたとする遺書を残し、総領事館内で自殺していたことが分かった。
外務省は館員が死亡したことは認めているが、「遺族の意向があり、詳細については話せない」としている。
複数の政府関係者らによると、館員は、総領事館と外務省本省との間でやり取りされる公電の通信技術を担当する「電信官」だった。自殺後、総領事や家族などにあてた遺書が数通見つかっており、このうち総領事あての遺書の中に、中国人の男から交友関係を問題視され、総領事館の情報を提供するよう求められたという趣旨の内容が記されていたという。要求された項目は、総領事館に勤務する館員の氏名や、外交機密に属する文書などを上海から日本に運ぶ際に利用する航空便名――などだったといい、男は情報機関関係者だった可能性が高いとみられている。
遺書の中に、「国を売ることはできない」などとも書かれており、館員は外交機密に関する情報は男に伝えなかったとみられる。06年3月31日(読売新聞)

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女性の立場から考えると、自分の肉体をえさにハニートラップをしかける行為は、なかなか実感が伴わないのだが、佐藤優氏によると、中国では”伝統的”に女スパイがいるとのこと。だから、いい女に声をかけられたらインテリジェンスの面から、ほぼ間違いなく罠だと思えとの教訓だ。

ワン(タン・ウェイ)は、身長172センチ、最高級の女スパイ。狙う相手も、日本占領下の上海での特務機関の大物のイー(トニー・レオン)。イーは用心深く、冷酷な男だったが、彼の妻と親しくなり、暗殺の命令を受けて接近していく。とうとうイーと関係をもつのだが、それはお互いの生死をかけた激しくも狂おしい逢瀬だったのだが。。。

なんといっても中国の映画史上、初めてともいえる激しい性描写で話題をよんでいるアン・リー監督の『ラスト コーション』。18禁映画になれている?私でも、初めての密会での過激なシーンには、あっけにとられたと言ってもよいだろう。あの最初の行為の衝動を分析してみると、イーにとって、ワンは日頃の重い任務からくるストレスと緊張を爆発させるためのてっとりばやい性的なはけ口である。彼女は若く大変美しいが、彼女への関心は肉体だけで、一瞬でも現実逃避をして自分の欲望を満足するための単なる性の道具でしかない。この場面で、アン・リー監督は、イーの特務機関での特殊でふれてはならないダーティな仕事を観客に想像させ、そのミッションを見事に貫徹する男の冷酷無比な姿を暗示していると感じた。それに、あのスボンのベルトを抜いて彼女の手首をしばりあげる目にもとまらない素早い動作!慣れているな・・・。つまり、このようなプレィは、彼にとっては特別なことではなく、女をお金で買う感覚に近いのかもしれない。
ところが次のベッドシーンでは、激しく何度も抱き合うふたりの姿を映している。複雑な体位がなにかと話題先行しているようだが、アレが一般的な体位だったらなんの意味をもたらさないのではないだろうか。ふたりは、夫婦でも恋人でもない。愛情や信頼の自然な流れでの行為ではないのだから、性の交えわりにおいて相手の顔や目を見つめあう必要もなければ、心を通わせる愛撫や前戯も不要。肉体だけのつながりは、極限なまでの性的な快楽の追求しかない。相手の肉体をむさぼるように激しい情欲に耽溺することによって、自我を消滅させて無になる、官能よりもむしろ性愛の深淵を感じさせる重要なふたりの構図であると、、、家政婦ではないが私は観た。
そして3番めのベッドシーン。私は、イー夫婦の設定は、SEXレス夫婦だと思っているのだが、これまでどちらかというと受身だったワンが、主導権を握ってイーと対等な性的パートナーに昇格している。お互いの肉体の、それこそ脚の指まですみずみに至る皮膚感覚の経験と記憶、快楽のツボを熟知したふたりは、性から本物の愛情を獲得していく。これは映画『レディー・チャタレー』にも通じていると思うのだが、性的な関心へのSEXから始まって、性交を通して相手をカラダだけでなく心から理解して愛情に変節することに近い。

イーと対立する関係にあるのが、ワンの初恋の相手であるクァン(ワン・リーホン)だ。クァンは、初めて会った時から、清楚な女学生のワンにひかれていた。しかし、劇作家の山崎正和さんによると現代は脱イデオロギー社会だそうだが、1940年代の上海では政治闘争のイデオロギーのために、私心を封印してきた男らしい男である。そんな彼は、理想的な男性でもある。容姿に優れ、育ちのよさを伺わせる純粋なものの考え方、学生演劇部をまとめる人望、抑制の効いた理性的な面をもちながら情熱も失わない。与謝野晶子の「熱き血潮に 触れもみで 淋しからずや 道を説く君」のような男である。Gacktさんが映画『MOON CHILD』制作時に釣っただけあって、ワン・リーホンはクァン役を魅力たっぷりに演じている。一途なワンの行動も、最初は好きな男性クァンの思想に殉じるところからはじまったのだった。プラトニックな愛と性的な愛。
ワンが最後に選択したのは、性愛だった。どんなに好きになっても、触れることもない清らかな関係。それは、恋愛の本質ではない。性的な関係が、愛から愛”情”に昇華させたのだから。たとえ、自分の命を落とすことになっても。

しかし、なんと言っても、この映画の最大の魅力は、トニー・レオンだ。『ブロークバック・マウンテン』でも感じたのだが、アン・リー監督は男性の描き方が上手である。
初めて心を許した女性への静かな愛情と、失った哀しみ、45歳の男性の渋い色気を見事に演じている。私は、『シクロ』で詩人を演じたトニー・レオンを最高だと思っているが、この映画は彼の代表作になるであろう。実年齢でも45歳のトニー・レオンは、若く見えてしまうので老けメイクで撮影に挑んだそうだが、いつもはにかんだようなポートフィルからは想像できない大胆な演技をする方でもある。
性愛を核にするためだろうか、物語そのものは単純である。それでも158分の長丁場、一時も気持ちが散漫にならないのは、トニーの色気だけではないだろう。37億円もかけた重厚な映像と時代の雰囲気、念入りな心理劇、もはやアン・リー監督の作品には、巨匠の風格さえただよう。

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『ブロークバック・マウンテン』
『ブロークバック・マウンテン』雑感
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2013.12.15 Sunday

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22:04 | - | - | -

コメント

話題のベッドシーンですが、私には少々やりすぎに感じてしまいました。
激しさ、長さは必要だったと思いますが、あの春画みたいな変な体位はちょっと(笑
試したわけじゃないので、実際どうかはわかりませんが、あれは見せるための体位で、やってる方は楽しくも気持ちよくもないのじゃないかと思い、愛欲に没頭しているように見えませんでした。
アン・リーの意図は何となくわかりますが、正直なところ体位が変すぎて引きました。
全体としてはしっとりした良い映画で、かなり好みですけどね。
2008/03/02 10:27 PM by ノラネコ
>ノラネコさまへ

こんばんは。

>あの春画みたいな変な体位はちょっと

やはり、ちょっと・・・でしょうか。(笑)
まあ、あのような体位で、実際快楽が増すとは私も思いませんが

>あれは見せるための体位

私は逆にボカシを入れられないために重要な部分を隠すための体位かと思っていました。ハハハ。
シャンハイ・ハイボール、、、美味しそうですね。
映画だけでなく、ノラネコさまのお酒のストックには毎回感心させられます。
              
      ― 今夜はイタリアの白ワインの樹衣子より
2008/03/03 11:30 PM by 樹衣子

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