千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  
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2008.02.11 Monday

『第三の男』

第三ちゃららら〜ら〜らら〜ん・・・、、、
アントン・カラスによるチターの音楽が、ユーモラスに軽快に、そして哀愁を帯びて、第二次世界大戦直後、米国・ソ連・フランス・英国によって分割統治されていた冬のウィーンの夜を流れていく。戦禍の後のウィーンの街は、今日の華やかさを予想できないくらい暗い。

これだけで、映画好きの同好の士は、『第三の男』とわかるだろう。何度も映画評論家やファンの間で名作として語り尽くされたきたこの映画。
そう、私もこの映画を観たのは、今回で3回め。けれども、過去2回の体験は、単なる映画を観たという履歴の更新だけで、この映画を観ていながらも恥ずかしくも全くわかっていなかった。『第三の男』が制作されたのは1949年だが、今回あらためて映画を観て、その完成度の高さに深く感嘆させられてしまったのだ。

親友に呼ばれて米国からはるばるウィーンにやってきた主人公の作家マーチンス(ジョゼフ・コットン)が、その肝心の友人ハリー(オーソン・ウェルズ)が事故によって亡くなったために彼の埋葬にたちあう場面ではじまり、最後は”第三の男”の埋葬で終わるという最初の場面のくりかえしで完結する見事さ。そして光と影の巧みな計算された使い方は、思わずうなってしまう。ずっと影にいて見えなかった謎の男が光の中で正体をあらわし、不敵だがひきつけられるような笑顔を浮かべるシーンは、あっと声をあげてしまいそうになり、ここでの猫の使い方にも感心してしまった。地下水道を逃げるハリーの焦る表情と追い詰めるキャロウェー少佐と警官たち、そしてマーチンス。あともう一歩で脱出、という時に、地上にでられる格子に入れた指が凍てついたウィーンの道路から突き出ている映像は、衝撃的ですらある。音楽の使い方の素晴らしさは今更言う必要がないだろうが、短めのカット、長いシーン、あらゆる映像のピースが意味をもった長さで完成度が高く、ひとつひとつの役者の動きと表情、ほんのわずかな視線にすら意味と理由がある。なんてこった、この理由に気が付かなかったのだ、私は。

友情と正義、そして親友の恋人アンナへの想いに悩むマーチンスを演じたジョゼフ・コットンは、渋さの中にも甘さと米国人らしい率直さがある。そんな彼を「正義感あり、善良だが無害」と批評するアンナだが、自分を売られてもハリーを思う成熟している女性を演じたアリダ・ヴァリはこの時28歳。最後の名場面も含めて、昔の女性はなんとオトナなのだろう。
そして、ほんのわずかな登場にも関わらず、観客の心をつかんでしまうのが、オーソン・ウェルズの存在感と観覧車での言葉である。

「イタリアではボルジア家三十年の圧政の下に、ミケランジェロ、ダヴィンチやルネッサンスを生んだ。スイスでは500年の同胞愛と平和を保って何を生んだか。鳩時計だとさ」

薄めたペニシリンで闇商売をするハリーが単なる悪人ではなく、その人物像に深みを与え、また観覧車から遠くに見える人間の存在のあまりの小ささを、自己の利益追求の言い訳につかう彼の姿には、戦争をする現代の政治家とも重なってみえてくる。そしてもともと脚本になかったこのセリフをオーソン・ウェルズ自身が考えたというエピソードもいろいろ考えさせられるものがある。深い余韻で映画史に残る最後のシーンにも関わらず、『第三の男』といえば、オーソン・ウェルズと世間に認知されていることもあわせ、やはり彼は異能の人だったと思う。

映画の趣向も、読書や音楽とともに年々少しずつ変わってきていると感じる今日この頃。そして読書や音楽もそうであるように、たくさんの本や音楽、映画と出会い感性を磨かれることによって、本質の鉱脈にふれることができると思う。自信をもって言えるのは、この『第三の男』は、間違いなく名作中の名作。
監督・制作:キャロル・リード
原作・脚色:グレアム・グリーン
撮影:ロバート・クラスカー
1949年制作イギリス映画

JUGEMテーマ:映画



2013.12.15 Sunday

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