千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  
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2013.12.15 Sunday

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2008.02.09 Saturday

「あの歌声を再び〜テノール歌手ベー・チェチョルの挑戦〜」

ぱ昨夜、金曜日週末にも関わらず?呑み会もなく自宅で読書をしていると、家族の健やかな大音量のいびき声(さっさと、布団に入って寝ろ)とともに聴こえてくるのが、テノール歌手の歌。この声もいびき声に負けずに豊かな声量ではないか、そしてなんと言ってもテノールなのだが、あかるさだけでなく叙情的な重さがあり誰もが思わず耳を傾けてしまう声なのである
その声の持主が画面に映っているノーメークのデーモン小暮さん(←あくまでも推測)のような顔立ちの韓国人であることに、まず興味をひかれた。近年、日本人に並ぶくらいクラシック音楽界での韓国人の方の活躍はめざましいものがあるが、鍵盤楽器や弦楽器の分野ではいざ知らず、世界に通用する日本人のオペラ歌手がまだまだ少ない事情を考慮すると、外来アーティストであえて同じ東洋人である韓国人のオペラ歌手の歌を聴きたいとも思わないのが、率直な感想である。
私のような日本人が多いのだろうか、韓国人という点で集客力の懸念から積極的なリサイタルはあまりないが、韓国人の優秀な歌手が育ちつつあるのは事実である。

声の持主である韓国人歌手は、べー・チョチョル(Bae Jae−chul)さん。
彼を紹介するナレーションが続く。まだ歌手としては充分に若いベーさんは、2005年甲状腺癌の摘出手術によって声(番組では、「アジアで100年にひとりの逸材と言われた声」と紹介されていた)を失ってしまった。

ベーさんは、イタリアのヴェルディ音楽院を修了後、欧州の声楽コンクールで優勝した後に、ハンガリー国立歌劇場、パルマ市立歌劇場、マドリッド・オペラハウス、デュッセルドルフ・ライン歌劇場で主役を歌う。まさに舞台経験を積んでいる途上で不運にも歌手にとって命である声帯の病にかかった。住んでいるドイツで手術をした当初は、1ヶ月で復活するという説明だったそうだが、声がかすれてしまった。原因は、手術によって声帯をコントロールする神経が切断されていたことによる。そのため、ベーさんを日本でデビューさせたヴォイス・ファクトリー蠅領愿菘貘析困気鵑紹介した京都大学名誉教授の一色信彦ドクターが、甲状軟骨形成手術を執刀することになった。一色ドクターが”歌手は求める声”が違うための執刀された手術の模様が映像でも流された。実際に声を出しながら、最も声量が豊かになるピンポイントを求めて軟骨の足場を探る手術は、非常に繊細で世界ではじめて開発された方法である。
ところが、手術の成功によって声を取り戻したのだが、その声が歌手として続かないという次の課題が見つかった。右側の横隔膜を動かす神経までも切断されていたのだった。レントゲンで見ると一目瞭然であるが、その分野は、一色ドクターの専門外。歌手というのは、サッカー選手並の肺活量と体力と、声の天からの宝物がなければなれない職業だとつくづく思った。だが、たとえ横隔膜が動かなくても、周囲の筋肉を鍛錬することによって補助できるそうだ。見えない可能性を求めて、ベーさんは、声楽家をめざしていた妻の支えを借りて、日々楽譜の勉強と発声、歌の訓練を続けている。

ベーさんは、現在ドイツのザールブリュッケンにあるザールランド州立劇場にプリモ・テノールとして在籍している。病に倒れても、今年の6月まで契約を延長してくれたので、彼の部屋がまだある。ベーさんは、韓国に帰省して音楽と出会った教会で歌いはじめた。ずっとベーさんを支え応援してきた輪嶋さんの提案により、メゾソプラノ フィオレンツァ・コッソットの舞台の後に、観客がいなくなった後で彼を見守ってきた人々を前に歌うという企画が実現した。
歌うことの原点に戻ったベーさんの賛美歌は、まだ芸術家としては舞台に立てるほど回復していないが、崇高ですらあった。復帰をかけるベーさんは、今、38歳。

この番組は、BSで2時間番組として放映されたものが、反響が大きく評判がよかったために1時間に短縮して地上波で再映された。私が観たのは、その再放送版の「プレミアム10」である。
米国選挙の動向の鍵を握るのも、いかにテレビCMにお金をかけられるか、というイメージ戦略にもよる。やはりテレビの力は大きいのだ。制作はNHKのディレクターの古市礼子さんという方だそうが、病、手術、支える家族を中心に女性らしい柔らかな感性が感じられる番組だった。この番組を観て思い出したのが、ある日本人女性ピアニストのことである。その方の半生のドキュメンタリー番組がNHKで放映されたら、音楽的実力とは関係なく人気に火がついて今でもCDの売上やチケットの売上は衰えない。彼女をモデルにしたかのような篠田節子さんの小説もあった。この番組では、”感動”をひきだすほどの力はない。というのも、歌手として致命的な病気、手術、復帰したが、舞台にたてるまでの完成度がない。つまり、物語の途中なのである。
それでは、この番組の価値が低いかと言えば、それはまた違う。安易な”感動”はないが、復帰に向けて毎日努力をしているベーさんを見ていると感じるものがある。1時間番組では歌手としての苦悩や鍛錬の映像こそ少ないが、彼の心中を察するにあまりある。かって一緒にヨーロッパで修行したライバルとも言える同じ韓国人歌手が、自分の日本デビューを飾った「イル・トロバトーレ」のマンリーコ役を歌って喝采をあび、舞台からオーケストラがひきあげ観客が去った後、わずかな人々を前に静かにミサ曲を歌うベーさんの胸中に宿った感情を想像するのは、あまりにもつらいものがある。
そして、彼を日本に招聘してリサイタルを開いたヴォイス・ファクトリーの輪嶋さんも、不思議な存在感がある方だ。プロフィールを読むと、10歳でオペラの「トスカ」に遭遇してからこどもの頃の夢は、「スカラ座の裏方」で働くことだったそうだ。その後、法学部を卒業後司法試験浪人時代に音楽事務所でバイトをして、これまでの業界とは異なるタイプの「心の声」を届ける事務所を設立した。「チケットポンテ」も手がけている会社だったのだが、一時は、ヴァイリニストの川畠成道さんも在籍していたようだ。

ベーさんの声は、世界的にも貴重な「リリコ・スピント」の声質をもっているという。まだこの物語は終わっていない。

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2013.12.15 Sunday

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16:23 | - | - | -

コメント

はじめまして。ベーさんで検索してやって参りました。
私は地上波の方を15分頃から見て感動しました。
konstanzeさんがお住まいの場所が分からないのですが、
今度の日曜、午後2時半からベーさんが神奈川県大和市に
いらして、何曲か歌って下さるそうです。主にフィルム・
コンサートとお話になるようですが。
チラシ(pdf)のURLを記しますね。
http://www.yamatocalvarychapel.com/topic/20080928/concert.pdf
輪嶋さんが「新しい声」と評されているそうで、
素晴らしいなとは思いますが、歌をする者として
感動だけではない複雑な思いもありますが…
聴きに行きます。
2008/09/26 11:50 AM by ゆうき
ご訪問とコメントをありがとうございました。

べーさんがいらっしゃるのですね。

>主にフィルム・コンサートとお話になるようですが。

やはり本格的に復帰されるのは、もう少し時間もかかるのでしょうか。
せっかくの情報をお寄せいただいたのですが、やはり大和市は遠いので残念です。

>歌をする者として
感動だけではない複雑な思いもありますが

ゆうきさまの”複雑な思い”を門外漢の私が想像するにあたり、本当に複雑な思いなのだろうとお察し致します。
このドキュメンタリー番組で感動するのは、簡単です。ただ、べーさんは、自分の努力への賞賛や悲運な人生への同情を人々に求めているのでしょうか。もし、本当の歌手だったら。
それが、私の中での複雑な思いの一部ですね。
またのご訪問をお待ちしております。
2008/09/26 11:13 PM by 樹衣子*店主
樹衣子さんは、神奈川は遠くていらっしゃるのですね、ごめんなさい。
実際のところどこまで元に戻るのか分らない状態なのではと推察しています。

私も、今のベーさんの本当の気持ちを確かめたい思いも
あって明日行くのかもしれません。
何かご報告出来そうなことがあったらまた書かせて
頂きますね…。
2008/09/27 10:14 AM by ゆぅき
>ゆぅきさまへ

返信遅くなりました。
昨夜は、チケットをいただいたコンサートに行って来ました。

>今のベーさんの本当の気持ち

これをお聞きするのもなかなか苦しいものだと感じます。
でも、ひとりでも多くの方が、しかも日本の方が応援してくれる事は、きっとべーさんには励ましになるでしょう。
2008/09/29 9:45 PM by 樹衣子

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