千の天使がバスケットボールする

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2013.12.15 Sunday

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2008.01.18 Friday

「アメリカン・コミュニティ」渡辺靖著

あめ髪の色と同じ、シルバーのポンポンをもち、真紅の超ミニ・スカから伸びた脚が、なんとなくこころもとない。
それもそうだ、1992年に結成されたチアリーディングチーム「ジャージ・ポムズ」のメンバー32人の平均年齢は70歳!最高齢は、83歳。元気なおばあちゃま軍団は、地元の劇場でその艶やかな姿と妙技の成果を披露するだけでなく、大きなイベントにもちゃんと招待されている。2年前には、ディズニーランドの舞台にもたち、ポンポンとともにはじけまくった。

このチームの本拠地は、米アリゾナ州サンシティ・ウエスト。ここはリタイヤした55歳以上の人だけが住める高齢者専用のコミュニティで、現在の人口は約3万1000人。米国では、日本のようにまず行政ありきではなく、このような住民指導で町が形成されることが法的にも可能だ。米国人の複雑で多様な事情を映し出したかのような「コミュニティ」。このようなコミュニティは、モザイクのように点々と広がっている。そこは米国にありながら、まるで別世界の独立したひとつの国のようでもある。

文化人類学者の著者は、米国の個人と国家の論理、ローカリズムとグローバル化、伝統と革新、保守とリベラルの論理を考えるために、こうした倫理の交差点であるネットワークのひとつ、米国人が最も大切にしている「コミュニティ」をフィールドワークスした成果が本書である。

著者が訪れたコミュニティは、9ヶ所。
進化論を否定し、アーミッシュのような原理主義的な信仰をもちながら、グロバリゼーション化によって玩具や家具のビジネスで成功して、彼らのコミュニティを維持しているのは、信仰よりもビジネス(工場)と批評されるブルダホフ。貧困と荒廃していた町が再生して希望のストリートに変貌してソーシャル・キャピタルが民主主義を支えている概念から論じた「孤独なボウリング」の著者、ロバート・パットナムもうならせたダドリー・ストリート。成功した富裕層が自己充足的な生活空間の確保のために築く要塞都市、ゲーテッド・コミュニティや、表紙にあるような宗教右派メガチャーチが司るコミュニティなど。裏表紙の箱庭のような人工的な街は、ニュー・アーバニズムの手法を取り入れたディズニーランドが創った町「セレブレーション・フロリダ」である。ここでは多くのクラブ活動やボランティア活動で活気があり、秋には落ち葉、冬には雪を人工的に降らせたりもする。大変美しく素晴らしい街である。けれども、私にはなんだか映画『トゥルーマン・ショー』の舞台の町を彷彿させる。勿論、住民の8割以上が共和党支持者で殆ど白人である。日本人の感覚からすればとても住めないような街から、典型的なアメリカと評される町、刑務所のある町まで、実にその「コミュニティ」は多種多様である。

その”多様性”こそが、単なる社会構成の多様性を指すだけでなく、定義づけを拒むカウンター・ディスコース(対抗言説)が存在することに米国らしさの特徴がある。また、多様性は米国的な自由を生み、民主主義の思想を発展させてきたと私は思う。おりしも大統領選挙運動が白熱しているが、共和党員の3分の1は人工妊娠中絶に賛成して、民主党員の3分の1が反対している。さらに共和党員の3分の1は、銃規制に賛成している。保守かリベラルかの二色では描ききれないのが米国である。そして多様性を背骨の如き貫く存在が、資本主義や市場主義という現実。米国を論じる際に必ず引用される150年以上も前のフランスの思想家、アレクシ・ド・トクヴィルの”地位の平等という基本的事実を再発見した”と記された米国。著者が9つのコミュニティを訪問した感じたのは、地位の平等よりもむしろ資本主義や市場主義の力だった。ロバート・パットナムの指摘したノスタルジックなソーシャル・キャピタルの低減よりも、グローバル化した市場経済の波にソーシャル・キャピタルもプロセスでのみこまれているということだろうか。
気鋭の学者である著者の本書は、現在進行形の米国を語り、幾分感傷も交えて米国を感じる。世界に嫌われても、やはりこの国はおもしろい。


さミニのおばあちゃま達は溌剌としていて、どのメンバーも年齢よりも若く見えるそうだ。サンシティ・コミュニティには、住民用のスポーツや文化講座は120以上もある。初等教育にお金がかからないため、住民税は安い。年齢を意識せずに真紅の超ミニをはいて、女であることを死ぬまで楽しめる街。
私もおばあちゃんになったら、こんな街に住みたいと思うのだろうか。

■アーカイブ
「孤独なボウリング」ロバート・D・パットナム著

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