千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  
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2007.11.09 Friday

「地球を斬る」佐藤優著

地球ロシア、モイカ川の岸辺にクラシック様式のユスプフ宮殿が建っている。小さな大理石のプールを備えた瀟洒な邸宅のような宮殿の歴史を彩どる事件は、なんと言っても「怪僧ラスプーチン」の暗殺事件にあろう。血友病だった皇子アレクセイを”治療”して貴族の夫人の人気を集め、今時の教祖のような存在だった彼には、あやしげな噂が絶えず、また政治にも口を出したことから、1916年12月17日、フェリックス・ユスプフらに毒を盛られ、銃で撃たれてネヴァ川の氷の穴に投げ込まれて溺死した。そのラスプーチンから「外務省のラスプーチン」と呼ばれた佐藤優氏の近著が本書である。

本書は、R35世代のビジネスマン向けの日刊経済紙の週イチの今年3月まで連載されたコラムをまとめたものであるが、エネルギッシュな佐藤氏らしく単なる再録ではなく、検証と大学生などの初心者のための若葉マークのようなオリジナル解説、キーワードを添付するという趣向が凝らされている。
ところで若葉マークと言えば、我々日本人がインテリジェンスという概念とその重要性にあまりにも無知だと知らされたのも、こうした佐藤氏や手嶋龍一さんらの活躍によるところが大きい。起訴休職中の外務次官という特異な立場からロシアと日本のリアルな政治の発信者だった著者は、最近はそんな幼稚で初な国民に向けて、上質なインテリジェンスの考え方を伝授する第一人者としての活動の場をシフトしているようだ。

インテリジェンスには、暗黙の業界ルールがある。口の軽い者は、命も軽い。映画の『007』のような世界が本当に存在していた。ソ連からロシアへの移りかわりを書いた小林和男氏の『エルミタージュの緞帳』がジャーナリストのものだとしたら、佐藤優氏の『自壊する帝国』は、国民の税金を使って国益のために文字通り命がけで働く外交官のものだった。外交問題に「ゲームのルール」という単語を使う政治世界は、ヒューマニズムに重きをおくジャーナリストとの視座とは全く異なる次元の頭脳の働き方が必要である。手の汚れないキャリアとは異なる立場で死ぬほどウォッカを呑んで帝国に関わった著者の、報道される表面の裏、そして脈々たる動向、予測される未来のシナリオまで洞察する視野に、世界を読み解きたい読者にとっては本書は魅力的で頼りになる導師に思えるだろう。
伝導師に従えば、国際情勢の正確な分析に必要な要素はふたつ。
まず、情報分析に必要なデーター収集にある。ごく当然のことと思えるのだが、致命的な欠陥として日本人は日本文化から離れて国際情勢を認識することができない。例えば、日本の全国紙は、政治的見解について事象に対する評価こそ異なっても扱うテーマーがほぼ同じでその枠組の範囲内に収まっていることである。これは、私自身も外国旅行に行った時に、読めないながらもその国の新聞を眺めるだけで感じていたことである。
次に第二の要素として、分析の視座をあげている。ヘーゲルの分析手法を応用して、当事者としての意味を明らかにして対象の内在的論理をつかみ、その上で対象を突き放した有識者(我々)にとっての意味をつかむことである。弾道ミサイル、核兵器をカードにした北朝鮮の”弱者の恫喝”を将軍様のラブコールという読み方は、まさに目からうろこである。

ただ残念なことに、それとは別に何度も登場する外務省や現役外交官への苦言や提言を読むと、天職を奪われた者の無念さもにじみ出ている。
著者の人物を評する表現で”腹のある”というのがあるが、こうしたインテリジェンスに関わる職業人として求められている資質のひとつであるが、ひ弱で稚拙な外交官を見るにつけ、歯がゆいのであろう。
怪層ラスプーチンは、毒を盛られてもまだ息があったために、さらに銃を撃たれた。佐藤氏もソ連当局からの警告を無視してリトアニアの分離独立派に力を入れていたため、しびれ薬のウォッカを飲まされ、半日身体が動かなくなった経験があった。これは、インテリジェンスの「ゲームのルール」が適用された結果である。外務省のラスプーチンのタフぶりも、全く舌を巻くほどだ。佐藤優氏こそは、実に腹のある男である。

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2013.12.15 Sunday

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コメント

おもしろそうな本ですね。日本の新聞などは耳障りのいいニュースしか報道しないとは感じています。世界の厳しさを隠蔽して平和に暮らしてもらおう、新聞を買ってもらおうというバイアスがかかっているようです。北朝鮮の恫喝は現実問題として気になる問題ですが、日本政府の発言には現実的な危機感が感じられません。なんとなく日本は蚊帳の外で世界は回っている感じがしています。外交官が何かの活躍しているとははじめて知りました。外交官のイメージとしては現地でパーティーとかして静かに暮らしてお金を貯めるというのしかありません。
2007/11/11 7:43 AM by iorinx
>日本は蚊帳の外で世界は回っている感じがしています。

実際そういう部分おおいにありです。
外交政策として致命的だと思います。国連の常任理事国加盟問題も含めて、本気で再考すべきでしょう。
外交官としてインテリジェンスの考え方を広めたのも、佐藤優さんの功績が大きいと思います。
外交というのは親善というよりも、すべてにおいて国益のための戦いです。
パーティも大事ですが、国益のためのパーティなんですね。
「地球を斬る」は読むおもしろさもありますが、むしろ世界事情の考え方の斬り口の指南書でしょうか。
2007/11/11 9:20 PM by 樹衣子
やっと読みました。
鈴木ムネオさんのことを思い出しましたが、
テレビのニュースを見ていてもわからない世界
というのが垣間見えましたね。
領土問題については実に参考になりました。
日本はどこかの国の属国だと思っていましたが、
実は独立国家であるというのを知って軽く驚きました。日本人はもう少し胸を張っていいんですね。
2008/04/11 12:45 PM by iorinx
>日本はどこかの国の属国だと思っていましたが、
実は独立国家であるというのを知って軽く驚きました

iorinxさま、、、きついジョークですね。笑

>テレビのニュースを見ていてもわからない

最近思うのですが、ニュースは本当に表層的です。新聞は、やっぱり必要で、また記者によっても視線が違う時もありますね。
近頃、署名記事が増えていますが、これは概ねはずれなしでよい内容が多いと私は思っています。

>鈴木ムネオさんのことを思い出しましたが

当時のマスコミの報道を鵜呑みにしていた私は、事実を全く理解していませんでした。恥。
地球はひとつだけれども、国は別なんですね。つくづく・・・。
コメントをありがとうございました。
2008/04/11 11:09 PM by 樹衣子

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